痛みの話Q&Awhat symptom
リウマチの痛み
関節リウマチ(RA)って何?(かんせつりうまち)
両側の手関節、足関節、膝関節など多発性の関節炎を主症状とする原因不明の全身性疾患です。日本全国の関節リウマチの患者さんは、約60万人と推定されています。30~40歳代に好発し、女性が多く、男性の約5倍です。
どうして起るの?
関節リウマチの原因はまだ解明されていませんが、関節リウマチの患者さんに見られる関節の腫れと痛みは免疫機構の異常によって起る関節の炎症が原因と考えられています。
免疫機構とは、自分の体の中に侵入して来た細菌やウィルスなどを攻撃して、排除しようとする人間が本来持っている防御システムです。
何らかの原因でこのシステムに異常が起ると、自分の体の成分や組織を自分のものでは無いと誤って認識し、攻撃して排除しようとします。
このように免疫機構と正常な組織の間に戦いが起ると関節液をつくる滑膜と言う組織が炎症を起こし、厚く腫れてきます。炎症を起こした滑膜からは破壊的物質が出て、しだいに関節の軟骨や靱帯を破壊し、関節がゆるんで変形します。進行すると骨も破壊されます。これが関節リウマチです。
症状と経過は?
関節炎は左右対称に手や足のゆび、膝、肘、肩の関節に発症することが多く、手の朝のこわばりが特徴的です。炎症のある関節には重い痛みと腫れが出て、時に水が溜まることもあります。痛みは天候の影響を受けやすく、特に雨の前日、寒い日などに痛みが強くなります。
関節リウマチの経過は、患者さんの約65%はあまり進行せず軽症のまま経過します。主に手や足のゆびなど小さい関節に炎症が見られます。リウマチの薬に比較的よく反応します。残りの35%の患者さんには、徐々に進行するタイプと急速に進行するタイプがあります。この例では、抗リウマチ薬の使用とリハビリテーションに併行して、適切な時期に手術を行います。
診断は?
早期関節リウマチの診断は、日本リウマチ学会の診断基準(1994)によります。
1.3関節以上の圧痛または他動運動痛
2.2関節以上の腫脹
3.朝のこわばり
4.リウマトイド結節
5.赤沈20mm以上の高値または、CRP陽性
6.リウマトイド因子陽性(抗CCP抗体検査など)
以上6項目中、3項目以上を満たすものを早期関節リウマチと診断します。
治療法は?
関節リウマチの治療の目標は次の3点です。
1.関節の破壊を防ぐ又はコントロールすること。
2.機能障害を防ぐこと。
3.痛みを和らげること
このためには、内服薬や注射などの薬物療法とリハビリテーションを行います。これらの治療でも痛みが軽くならず、日常生活に支障が出る場合は手術を行います。
内服薬
非ステロイド性鎮痛薬(NSAID)「ロキソニンなど多数」
抗リウマチ薬(DMARD)「リウマトレックスなど11種」
副腎皮質ホルモン薬(ステロイド)「プレドニンなど多数」
が中心です。これに加えて最近では
生物学的製剤「レミケードなど2種)
と呼ばれる薬が使われる様になりました。
これらの薬を症状に応じて使います。現在市販されている薬では、効果が高いほど副作用も強い傾向があります。特に抗リウマチ薬や生物学的製剤には、間質性肺炎などの重い副作用を発症する例があり、これらの薬の使用の際には医師による厳重な管理が必要です。副作用の少ない良い薬の開発が待たれます。
関節内注射
ヒアルロン酸(アルツ注、スベニール注)を週1回、肩関節又は膝関節に注射します。ヒアルロン酸の除痛効果については変形性ひざ関節症を御覧下さい。
関節の腫れと痛みが強く、穿刺した関節液が白く濁っているときは、初回のみ、ステロイドを関節腔内に注射します。ステロイドは強力な抗炎症作用がありますが、感染の誘発など副作用に注意が必要です。
リハビリテーション・理学療法
関節の痛みのために動かさないでいると、関節がこわばってしまい、筋力も弱くなってしまいます。
痛みの強いときは、ゴム製の湯タンポなので15~20分間、関節を温めます。これを朝夕2回続けます。
調子の良いときは、家庭で積極的に体を動かして、関節運動と筋力の強化訓練を続けます。
通院可能な方は、リハビリテーション室で理学療法士の指導で運動療法、理学療法を行います。変形した関節には装具を処方します。
通院が困難な患者さんは、介護保険を利用して訪問リハビリ(自宅に理学療法士や作業療法士が訪問して行うもの)を受ける事もできます。
手術療法
手術は薬物療法やリハビリテーションを行っても痛みが軽くならず、関節の障害のために日常生活が困難になったときに行います。
最近は侵襲の少ない関節鏡視下の手術がよく行われる様になりました。関節鏡で観察しながら関節の中を洗浄したり、炎症を起している滑膜を切除(滑膜切除術)したりします。
切れた腱や痛んだ関節周囲の組織を修復します。
変形したり、ゆるんだ関節を使いやすい位置で固定します。
進行して骨が破壊された関節は、人工関節で置き換えます。最近は良い人工関節が開発され、患者さんの満足度も上っています。
注意することは?
関節リウマチは、比較的症状の軽いものから重症のものまで様々なタイプがありますが、いづれにしても、できるだけ早い時期に正しい診断を受け、早くから治療を開始して、重症化を防ぎ、関節の機能を保つことが大切です。
関節リウマチの治療は、長期にわたるため、家族の理解と支援が必要です。
疼痛を和らげるためには、十分な睡眠、適度な運動、鉄分やカルシウムが豊富でバランスのとれた食事が大切です。
関節リウマチの症状は、軽くなる時期と、重くなる時期があります。関節の腫れや痛みの強いときは、安静と保温につとめ、腫れや痛みの軽いときは、関節の運動、筋力の強化訓練、日常生活動作(ADL)の改善訓練を積極的に行いましょう。
ストレスは、リウマチの痛みを悪化させます。反対に「笑い」が痛みを和らげるという面白い研究があります。