痛みの話Q&Awhat symptom
変形性ひざ関節症
変形性ひざ関節症って何? (へんけいせいひざかんせつしょう)
変形性ひざ関節症とはひざ関節の軟骨が、何らかの原因によって傷がついたり、劣化したりして、関節軟骨の粘りと弾性が無くなり、すりへって変形し、ひざの痛みを引き起こす病気です。ひざ関節に圧がかかると関節軟骨のコラーゲン繊維の構造が徐々に壊されて、少しずつ関節軟骨がすり減って変性がおこります。この変性が更に進むと、関節軟骨の粘りや弾力性が失われて軟骨の下の骨に骨硬化がおこります。日本人では、特にひざの内側の関節のすき間が狭くなるO脚の人が多く、骨の周辺に骨棘(こつきょく)(トゲ)が出来てきます。
高齢者人口の増加とともに、患者さんは増加しています。
どうして起るの?
変形性ひざ関節症の原因はまだ良く判っていませんが、
老化や体重による関節軟骨の変性。
関節液の中で、潤滑油として働き、軟骨の栄養分となっているヒアルロン酸という物質の減少。
半月損傷や膝の手術後の2次性変形性ひざ関節症
変形性ひざ関節症を引き起す遺伝子の存在。
などが考えられ研究されています。
症状は?
初期では、立ち上がり、歩きはじめに膝の内側が痛み、休めば軽くなります。
中期では、歩くと膝の内側の痛みが強くなり、正座、階段の昇降が困難になり、関節に水が溜まるようになります。
末期では、膝の外側への曲がり(O脚変形)が目立ち、膝が伸びず、痛みのため歩行が困難になります。
レントゲン検査で関節のすきまが狭くなり軟骨の下に骨硬化像、関節面の不整像、関節の辺縁に骨のトゲ(骨棘)が見られます。
治療法は?
保存療法:変形性ひざ関節症の方は、ひざの痛みのために活動性が低下し、ひざの周辺の筋肉、骨、靱帯などにやせがみられます。このために、ひざ周辺の筋肉の力を強くする運動、ストレッチ運動、歩行訓練を行います。特に筋力強化訓練が効果的です。
ひざが外側に曲がる変形のある人には楔状足底装具(きつじょうそくていそうぐ)やひざ装具、サポーターなどを装着し、理学療法を続けます。
薬による療法:痛み止めの薬(消炎鎮痛剤)を使い、定期的にヒアルロン酸の関節内注射をします。ヒアルロン酸は、もともと関節液内にある成分です。非常に滑らかで、粘りはあり、関節内での骨や腱の動きを滑らかにする働きがあります。変形性ひざ関節症では、このヒアルロン酸が減少し炎症をおこしています。一般的には、まず1週間に1回、5回連続してヒアルロン酸を注射します。痛みが治れば、ここで治療を終了しますが、痛みが続く場合は、その後2週間に1回の割で注射を続けます。
関節鏡視下デブリドマン:半月板の変性や損傷、関節軟骨のすり減りや損傷などは、関節鏡視下で半月板の部分切除、軟骨のシェービング、増殖した滑膜の切除などが行われます。効果は限定的です。
手術による治療:これらの治療法で良くならない変形の進んだ症例では、下腿の骨切り術(高位脛骨骨切り術)を行います。年齢が60~70歳以上で末期の状態であれば人工ひざ関節置換術を行います。最近は人工関節の性能が良くなり、熟練した先生に手術をしてもらえば、約95%に満足される成績が得られる様になりました。
膝の水を抜くとクセになるってほんと?
ひざの関節液は、滑膜によって、生産と吸収がバランス良く一定量(約2ml)に保たれています。ところが、関節液の中のヒアルロン酸が少なくなると関節軟骨がすり減り、壊れた軟骨の小さいかけらなどが滑膜を刺激して関節炎を引き起こし、関節液の生産を促します。吸収される以上に関節液が多量に生産されて、結果的に水がたまる事になります。水がたまると、正座ができなくなり、ひざに圧迫感や不快感がでます。水が滑膜を刺激して更に水がたまります。一回水を抜いても関節炎が治る訳ではないので、数日のうちに又水がたまります。「水を抜くとクセになりませんか?」といった質問を受けることがあります。水がたまるということは、関節炎が治っていないということで、クセになっている訳ではありません。つまり、風邪をひくと、鼻粘膜に炎症がおこり、鼻水が出ますが、鼻をかむ事がクセになる訳ではないのと同じことです。
ひざの外側に痛みの少ない細い注射針23Gを刺して水を抜き、同じ注射針からヒアルロン酸などを注射します。
注意することは?
ひざの筋力強化訓練を必要な人は、比較的高齢者が多くなります。「治療を受ける」という受身の姿勢ではなく「自分で治す」という意欲を持つことが大切です。
正座をするときは、お尻の下に置く「正座用の椅子」を使用し、洋式トイレ、ベッドなど、できるだけ生活を洋式に、重い荷物は持たない、長時間歩かない、体重を減らす、杖を使う、履き易い靴にするなど、ひざに負担をかけない生活を心がけましょう。
ちょっと詳しく
グリコサミン、コンドロイチン、ヒアルロン酸など のサプリメントは効くの?
最近、変形性ひざ関節症に対するサプリメントの効果について、よく質問されます。
関節軟骨の多くの成分は、約70~80%の水分です。その他の構成物質は、網目構造をしたコラーゲン線維とその間に存在するプロテオグリカン(蛋白質とムコ多糖が結合したもの)です。プロテオグリカンは、ヒアルロン酸と結合して水分を引き寄せ、軟骨の軟らかさを保ちます。
グリコサミンやコンドロイチンは、軟骨細胞でプロテオグリカンが合成されるときの材料となりますが、食べ物にも多く含まれており、同じ様に腸で吸収されると、一旦アミノ酸と糖に分解されます。再合成されたグリコサミンやコンドロイチンは、軟骨細胞に供給されてプロテオグリカンが合成されます。しかし、進行した変形性ひざ関節症では、コラーゲン線維で作られている網目構造が壊れているため、合成されたプロテオグリカンは、網目構造の間に入り込めず、又、ヒアルロン酸と結合して水分を引き寄せることもできないので、関節軟骨の成分としての役割を果たすことはできません。
サプリメントに高価な支払いをするよりも、栄養のバランスのとれた食事を心掛けた方が良いと思います。