痛みの話Q&Awhat symptom
野球ひじ
少年の野球ひじって何? (しょうねんのやきゅうひじ)
投球によるひじの障害を総称して「野球ひじ」と言います。
10歳から16歳の少年野球選手の30~40%がこの痛みを経験すると言われています。痛みはひじの内側と外側に起り、それぞれ原因が異なります。
ひじの内側の痛みは?
野球ひじの痛みは、約90%以上が内側に起ります。
投球動作の加速期、ひじの内側は、くり返し過度の外反ストレスを強いられ、ひじの内側に付いている筋肉(屈曲回内筋群)や靱帯(内側側副靱帯)に引かれて、成長過程の上腕骨の内側の骨端線に剥離(はくり)などの障害をおこします。これを上腕骨内側上顆(ないそくじょうか)障害といいます。又、ひじの内側にある靱帯は、投球時、ひじの外反ストレスによって、くり返し伸ばされて、傷つき(内側側副靱帯損傷)、関節の安定性が失われて痛みが出ます。
治療法は?
痛みの軽い例では、一定期間の投球禁止とその後の投球制限(1日50球以内)でほとんどは良くなります。レントゲン上、上腕骨内側上顆に剥離を認める例では3~4週間のギプス固定が必要です。剥離部の転位が大きい例では手術して固定することもあります。
内側側副靱帯の損傷には手術して、移植腱で靱帯を再建することもあります。
ひじの外側の痛みは?
投球動作で、ボールをリリースする直前、ひじの外側の関節に圧迫力がかかり、上腕骨小頭の軟骨や骨に壊死(えし)をおこします。ひじの外側に痛みを訴える少年の約20%に、レントゲン上、上腕骨小頭に約1cm前後の壊死巣(えしそう)が見られます(透亮期(とうりょうき))。この壊死した骨と正常な骨に分離線が現われ(分離期(ぶんりき))、離れて関節の中に落ちます(遊離期(ゆうりき))。これを離断性骨軟骨炎(りだんせいこつなんこつえん)といいます。
少年の野球ひじで強い症状をおこすものは、ほとんどがこの離断性骨軟骨炎(りだんせいこつなんこつえん)によるものです。
透亮期では、投球時にひじの内側や外側が痛み、ひじの内側や外側を押すと痛みますが、投球を休めば痛みは無くなります。
分離期になると投球のたびに肘に痛みが出てひじの曲がりや伸びが悪くなります。
遊離期では、関節内に落ちた遊離体が、関節の間に挟まって突然肘が動かなくなり、強い痛みのでることがあります。
治療法は?
透亮期・・・6ヶ月程度は投球を禁止します。痛みが軽快し、レントゲン写真上、透亮像が消えてから、徐々に運動を再開します。
分離期・・・手術で骨釘骨移植術が行われます。
遊離期・・・手術で遊離した軟骨片を取り除き、上腕骨小頭の骨欠損部に骨軟骨移植術、肘筋付き有茎骨移植や培養軟骨細胞移植術などを行って関節軟骨の修復が試みられます。
注意することは?
投球フォームと野球ひじの発症には、関連が指摘されています。下肢、体幹、上肢の柔軟性が低いと、投球の際の体重移動がうまく出来ず、上肢の力に頼ってしまうので、結果として肘の外反ストレスが増します。体の柔軟性の獲得と投球フォームの改善が大切です。