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腰椎椎間板ヘルニア
腰椎椎間板ヘルニアって何? (ようついついかんばんへるにあ)
脊椎にはクッションの役目をする椎間板があります。
この椎間板の一部が変形脱出して、神経を圧迫し、腰や殿部から脚の痛みをひき起こす疾患です。椎間板は髄核と、それを取り囲む線維輪で出来ています。椎間板ヘルニアは加齢によって椎間板が変性していく過程でおこりますが、変性の少ない10歳代にもおこります。重量物の運搬やスポーツによる負荷がきっかけとなる事もあります。
ヘルニアのタイプには、突出型、靱帯下脱出型、経靱帯脱出型、遊離脱出型などがあります。
最近、椎間板ヘルニアの遺伝子があることもわかってきました。
好発年齢は、20歳~40歳代。次いで10歳代、50歳以上です。
好発部位は第4、第5腰椎間、次いで第5腰椎と仙椎間です。
どうして起るの?
若い人の腰椎椎間板ヘルニア
スポーツ好きの男子や比較的体格の良い人女子に多く発症します。遺伝子により、両親や兄弟に家族発生することも少なくありません。好発部位は第4、第5腰椎間と第5腰椎と仙椎間です。成人と違い、殿部の痛みを強く訴えます。痛みのために背骨がS字状に曲り、太ももと骨盤が棒状に硬くなり、足を上げると骨盤も一緒に上ります。
成人の腰椎椎間板ヘルニア
急性の強い腰の痛みと殿部に痛みが走り、歩行が困難になります。腰と足の痛みは立っているときより座ると強く、又、咳やくしゃみで強くなります。
急性期では、かばう様に手を腰にあて、上体をかがめて片側の膝を曲げて歩き、脊柱は痛みから逃れるためにS字状に曲がって(疼痛性側弯)、腰部が板状になり動かせなくなります。
ベッドに上向きに寝かせて、膝を伸ばして足を挙げると殿部に強い痛みが出ます(SLRテスト)。
好発部位は第4、第5腰椎間、次いで第5腰椎と仙椎間です。 MRIで髄核の脱出を見ることができます。
高齢者の腰椎椎間板ヘルニア
高齢者の腰椎椎間板ヘルニアは、特に誘因なく発症することがあり脊柱管狭窄症を合併するものもあります。椎間板が変性して硬くなっているため、発症は成人に比べて少なく、発症部位は成人のヘルニアが下位腰椎に集中しているのに対し、高齢者では上位腰椎にもみられます。
治療法は?
発症年齢、症状、検査結果などによって治療法は異なります。ここでは、腰椎椎間板ヘルニアの一般的治療について解説します。
[保存的療法について]
正しく腰椎椎間板ヘルニアと診断された患者さんの大半(約70%)は、手術をせずに、保存的治療で、日常生活にあまり支障のない程度まで軽快します。
MRIで確認された大きな脱出型ヘルニアは、MRI所見で3~6ヶ月で自然に縮小する事が判ってきました。急性期には腰への負担を避け安静にして、消炎鎮痛剤の入った湿布、薬を使用します。トリガーポイント注射も有効です。
激しい痛みには、硬膜外ブロックや神経根ブロックが痛みを和らげます。
急性期の症状が軽快したら、薬を服用しながら理学療法(骨盤牽引、温熱療法)、体操療法により腰背筋や腹筋の強化を試み、症例によっては、腰椎用軟性コルセットを処方します。
[手術の適応について]
数ヶ月間の保存的治療を行っても、ヘルニアの自然消失の傾向が見られず、耐え難い痛みが続き、仕事が全く出来ず、日常生活にも支障があり、精神的に参ってしまったとき。又は、急速に進行する下肢の運動麻痺、排尿障害(尿閉、残尿、尿漏れ)等があるときは、手術の適応となります。
手術方法は?
[後方椎間板切除術(ラブ法)]
腰部に約5cmの皮膚切開をおき、背骨の後方部分(椎弓)を部分的に切除して、圧迫されている神経根を直接見ながら、脱出したヘルニアを摘出し、更に、神経根の癒着を防ぐ目的で神経根の周囲に脂肪を移植します。
最も一般的に行われており、90%以上の有効な治療成績が期待できる確立した手術手技です。
[経皮的髄核摘出術(MED法)]
約2cmの小さい皮切から、内視鏡を背骨の後方部分(椎弓)に進め、テレビのイメージを見ながら鏡視下で椎弓を部分的に切除し、脱出したヘルニアを摘出する方法です。
手術のきずは小さいのですが、手術視野が小さいために手術には熟練を要します。
この鏡視下手術は、今後更に技術的な改良が加えられ、発展していくものと思われます。
[経皮的レーザー椎間板減圧術(PLDD法)]
椎間板にレーザーを照射して、髄核を蒸発させ椎間板内圧を減少させる事で痛みを取ろうとする方法です。健康保険が使えないため、高額な負担となります。症例を選べば、有効な例が報告されています。
脱出型ヘルニア例、椎間板変性例、脊柱管狭窄の合併例、手術の既往のある例には、この方法の適応はありません。術後の成績にはかなりバラツキがあり、成功率は50~80%程度と言われています。
[その他の手術法]
脊椎固定法
前方椎間板切除術
キモパパイン椎間板内注射(日本では行われていません)
注意することは?
腰椎椎間板ヘルニアの大半は、自然に治ります。手術の適応をよく理解したうえで、整形外科専門医の診察をお勧めします。